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覚悟を持てるネーミングやコピーを共創する方法(α版)

よく「名は体を表す」と言いますが、それは「良い名のもとでしか良い体がつくり上げられない」からこそ、そのような言葉が生まれていると僕は考えています。つまり、理想的な「名(ネーミング)」や「コトバ(企業理念やタグライン、キャッチコピーなど)」とは、表したい「体(結果・状態)を為すための覚悟」を持てるものではないでしょうか。

どうしても関わる人が増えることで、様々な意見や感想は生まれてしまいますし、全人類が合意・納得することなど、もちろんありえません。しかし、重要なのは、少なくとも誰よりもそのコトバを多く使うことになる当事者・本人が、その信念とともに自分の声で語り続けられることだと信じて、これまで数多くのネーミングやコピーなど様々な言葉を共創してきました。そして少しずつですがそのためのプロセスの要点が整理できてきたので、まずはあくまでα版として、依頼者/意思決定者に対する共創パートナーの視点で以下に記しておこうと思います。

目次|10段階のステップ
① まずはオープンに語ってもらう。
② めちゃくちゃ共感する。
③ 本質的な提供価値を問う。
④ 考えすぎずに試作品をつくってみる。
⑤ 有効なフィードバックを得られるように問う。
⑥ インスピレーションを頼りにさらにつくる。
⑦ 4〜6を何度でも繰り返す。
⑧ イメージが湧く具体的な使用例を示す。
⑨ モノサシを明確にして比較検討を促す。
⑩ 覚悟をもって決定してもらう。

[ Step.01 ] まずはオープンに語ってもらう。

当たり前ですが、まず始めに必要なのは依頼者からのオリエンテーションです。しかしこのオリエンのもらい方にもポイントがあります。通常はある程度フォーマット化されたドキュメントで受け取ったり、こちらからのヒアリング項目に回答してもらうことが多いと思うのですが、僕の場合ははできるだけ何も問わずにオープンに語ってもらうようにしています。

「まずは自由に語ってください。」くらいの超オープン・クエスチョンで始めます。なぜならここで何から語るのか?何を語るのか?どの部分を強く(弱く)語るのか?などなどに本人のテーマに対する意志や覚悟、優先順位などが表れるからです。それらに対する温度感がわかっていないと、この後にどんな質問をすればいいのか?どんなアウトプットを考えればいいのか?のきっかけすらつかめず、そのまま進めても当たり障りのないフィニッシュになってしまうことが多いです。(具体案はつくれるけど決定に至らないことが多い人はこのステップをきちんと踏めていない可能性が高いです。)

また、意思決定者の認識も曖昧だったり、関わるステークホルダーの多い場合にはLEGO® SERIOUS PLAY®やPinterestを用いたワークショップなどを通じてビジュアルから語ってもらうことも有効です。

具体的な手法例|
・「今回のテーマについて自由に語ってください」などとオープンに問いかけてみてください。(〇〇ですよね?などとクローズドな質問は厳禁。)
・LEGOやPinterestなどを用いてビジュアルで可視化した上で語ってもらうというテクニックも有効です。

[ Step.02 ] めちゃくちゃ共感する。

自由に語ってもらい、具体的にやりたいことや気持ちが理解できたら、大げさなくらいに共感します。ネーミングにしろキャッチコピーにしろステートメントにしろ、目的としているのは「言語化(コトバづくり)」の部分なので、このあとのステップをお互い気持ちよく進めていくためにも大げさなくらいに共感するのでちょうどいいと思います。ポジティブな共感に呼応して、本人のコダワリや強い想いもさらに引き出されることでしょう。

一方で、ここまでのステップ1の時点で言語化したいテーマが理解できなかった場合や本人の中であまりにも何も固まっていない場合やそうでなくとも内容にまったく共感できなかった場合にはこの先のステップを進めてもうまくいかない可能性が非常に高くなります。

コピーライティングのプロセスにこういった感覚的なステップが入っていることに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、我々が本当にデザインすべきなのは文字情報としてのコトバというアウトプットだけでなく、それに対する本人の覚悟や意志だということを忘れてはいけません。

具体的な手法例|
・「いいですね!」「すごいですね!」「わかります!」などとめちゃくちゃ共感してください。(もちろんウソはいけません。)
・「ぼくも◯◯なのでそういうサービスあるといいなと思ってたんですよ〜」などと実体験も交えて共感するとさらに具体的なこだわりや意志、エピソードなどもさらに語ってもらえる可能性が高まります。

[ Step.03 ] 本質的な提供価値を問う。

オリエンテーションにおける要点を理解し、共感することができたらより具体的な「問い」を与え始めます。まずここで問うべきは「本質的な提供価値」です。新会社のネーミング、プロダクト名、サービスのキャッチコピー、個人理念、肩書きなど依頼テーマが何であったとしてもそれらは必ず何かしらの価値を世の中の誰か(もしかしたら自分)に提供していくための「体を表す名」に他なりません。その価値を提供する「具体的な誰か」にそれに気づいてもらうためにも、本人がその「提供価値」を常に見失わずに「体」を為していくためにも、その本質的な提供価値に一定以上は基づいて言語化される必要があります。

ざっくりですが例を紹介すると、「親子向けワークショップを提供する会社」の社名を考えたいとして、その会社の本質的な提供価値は少なくとも「親子にワークショップ機会を提供すること」ではなく「家族という概念を拡張して学びやふれあいの機会を増やすこと」だったりするでしょう。また、「新しいコワーキングスペース」の事業ミッションを考えたいとして、その会社の本質的な提供価値を「共同で働けるスペースを提供すること」と設定してしまったとしても魅力的な言語化ができるでしょうか?

しっかり共感して関係値を築いた上で「具体的に誰に向けて価値を生み出したいのか?」「どんな提供価値があるのか?」「何が一番のこだわりなのか?」「これだけは譲れないことはあるか?」「どんな状態がつくれたらハッピーなのか?」などなどと本質的な提供価値を深く問いていってください。逆に「言われてイヤだったことは?」などネガティブな体験を聴くことで本心にたどり着きやすくなる場合もあります。

具体的な手法例|
・「具体的に誰に向けて価値を生み出したいのか?」「どんな提供価値があるのか?」「何が一番のこだわりなのか?」「これだけは譲れないことはあるか?」「どんな状態がつくれたらハッピーなのか?」などの質問をどんどん続けてください。
・回答がイマイチ煮え切らない場合には「どんな体験がきっかけになってる?」「どんなときが嬉しかった?」「事業について言われてイヤだったことは?」など具体的な出来事や体験で問うこともおすすめです。

[ Step.04 ] 考えすぎずに試作品をつくってみる。

本質的な提供価値がある程度見えてきたら、いよいよ文字情報としてのアウトプットを考えていくことになります。言語化にあたっては色々な考え方や手法がありますが、例えば僕が以前に作成した「それだ!感のあるネーミングのつくりかた」というスライドでも紹介している「メイン食材+調味料(スパイス)」というフレームワークも1つの参考にできるでしょう。

前ステップで探った「本質的な提供価値」は「調味料(スパイス)」にあたることが多くなります。食材とスパイスの理想のバランスは言語化する対象が何かによっても変わってきます。ざっくり言うと、コトバを通じて「それが何であるか?」を伝達する必要性の高いテーマになるほど「メイン食材(=機能的な側面)」の比重が高まると感じています。

またアウトプットを魅力的に演出(調理)するためには、例えば「レトリック(修辞技法)」だったり、「強い言葉を生み出す技術」だったり、といった作文・作語のためのテクニックを知っていることももちろん大きな手助けになるのですが、名著「アイデアのつくり方」でも語られているように「既存の要素との関連性」から発想しようとすることを忘れてはいけません。

そのため、Pinterest類義語辞典和英辞典)といったインスピレーションを拡張するためのツールも用いながら、アイデアのタネをたくさんたくさん発散させることで関連性を見つけやすい状況をつくりながら具体案を考案していきます。

このステップで特に大切なのは、あまり自信を持てなくてもアイデアをとりあえずでもカタチにしてみることです。なぜなら頭の中で考えるだけでなく、実際にコトバをビジュアルで見てみることで新しい関連性や意味を発見することができるからです。

例えば、「&HAND(アンドハンド)」というネーミングも「手を差し伸べ合える」という提供価値から発想しましたが、「安堵(あんど)してもらえる」という意味も掛けられる、と気づけたのは実際にアイデアを考えた後です。また、「SIGNCOSIGN(サインコサイン)」という自分の会社の社名も「共に覚悟を共創する」という意味から「COSIGN(コサイン)」という仮の社名を発案したことをきっかけに、より意味の深い社名・ロゴを開発できたと感じています。さらに最近では、ブロックチェーン系のサービスのネーミングのアイデアを造語で出したところ、そのコトバがたまたまエストニア語のある動物のことを指していて、「ピッタリだしロゴのアイデアとしても活用できる!」みたいなこともありました。

(また言うまでもないことかもしれませんが、これらの例のようにコトバのプロトタイピングを通じて、ワーディングに留まらない視点や意味をブランドに与えていくことが言語化パートナーやクリエイターの果たすべき本当の価値だと思っています。)

具体的な手法例|
・困ったら「メイン食材(そもそもの機能)+調味料(本質的な提供価値)」からコトバを考えてみましょう。
・レトリックなどの修辞技法や伝え方の技術を習得することも有効です。
・でも、とにかくまずはつくってみることが大切です。
・その上でビジュアルシンキングしてみることで、新たな視点や意味を見つけられるはずです。

[ Step.05 ] 有効なフィードバックが得られるように問う。

ステップ4で良いコトバができあがったとしても、忘れてはいけないのはそのコトバを使う「本人の覚悟が決まるもの」でなければならないということです。試作品ができあがったら積極的に提示してどんどん感想や意見を引き出していってください。ここで重要になるのはなるべく「改善の参考となる具体的で有効なフィードバック」を得ることです。「なんとなくいいかも」とか「まあ普通かな」といったような感覚的・抽象的なフィードバックだけでは本人の覚悟に向けた精度の高いチューニングを行うことができませんし、そのためのインスピレーションを得ることもできません。

ステップ1とは対照的にここではなるべくクローズな質問を心がけてください。「AとBではどちらが良いですか?またそれはなぜですか?」「このアイデアのこの部分についてはどう思いますか?」「もっと〇〇感が強いほうが良いですか?弱いほうが良いですか?」「英語と日本語だとどちらが好みですか?」など、個人的には本人が覚悟を持てるためには当人のエゴも強く反映させたほうが良いと思っているので、好き嫌いに関わるような質問も積極的に行っていきます。

具体的な手法例|
・クローズな質問で調整の方向性を探っていきましょう。
・質問対象を限定することで明確な回答を得ることを心がけてください。
・本人のエゴや好き嫌いに関わる質問も積極的に織り交ぜると良いです。

[ Step.06 ] インスピレーションを頼りにさらにつくる。

有効なフィードバックが得られたら、それらのキーワードや感情をきっかけにしたインスピレーションを頼りにさらにアイデアを作り込んでいきます。

具体的な手法としてはステップ4と同様で、Pinterest類義語辞典和英辞典)といったインスピレーションを拡張するためのツールも用いながら、アイデアのタネをたくさんたくさん発散させることで関連性を見つけやすい状況をつくりながら具体案を考案していきます。

このステップでもやはり大切なのは、あまり自信を持てなくてもアイデアをどんどんカタチにしてみることです。なぜなら頭の中で考えるだけでなく、実際にコトバをビジュアルで見てみることで新しい関連性や意味を発見することができるのはアイデアを伝えられる相手にとっても同様だからです。はじめからつくりたいものを頭の中で明確・正確にイメージできている人は滅多にいません(むしろそうだったらこんなプロセスを踏む必要はありません)。だからこそ、様々な具体アイデアを実際に目にすることで初めて得られる具体的なフィードバックもきっと数多くあるはずです。双方をインスピレーションで溢れさせるためにも恐れずにアウトプットを続けましょう。

具体的な手法例|
・Step4と同様

[ Step.07 ] 4〜6を何度でも繰り返す。

ある程度以上の納得のいくアイデアに出会えるまでは、④: 考えすぎずに試作品をつくってみる → ⑤ :具体的なフィードバックを得られるように問う → ⑥ :インスピレーションを頼りにさらにつくってみる → ・・・というプロセスを何度でも何度でも繰り返す必要があります。

慣れない内は時間もかかると思いますし、お互いにとても疲れることになりますが、実はそれこそが良いアイデアにたどり着くために重要なポイントで、依頼主にもたくさん頭を使ってもらってヘトヘトにさせされているかどうかがプロセスの質を証明する重要なバロメータになります。ただ闇雲にやりとりを繰り返すだけではなく、頭を使わせる質問ができているか?またその答えを正確に反映するアウトプットを返せているか?を意識して進めることが大切です。

具体的な手法例|
・納得のいくアイデアに出会えるまでは、4〜6のプロセスを何度でも何度でも繰り返してください。
・その中で、依頼主にもたくさん頭を使ってもらってヘトヘトにさせされているかどうかがプロセスの質を証明する重要なバロメータになります。
・頭を使わせる質問ができているか?またその答えを正確に反映するアウトプットを返せているか?を意識して進めることが大切です。

[ Step.08 ] イメージが湧く具体的な使用例を示す。

ステップ4〜6を繰り返す中で、お互いに「これかな?」と思えるアイデアに出会えたら、いよいよ決定に向けて覚悟を決め始めるステップに移行します。そのコトバの持つワクワクする未来や可能性をたくさん提示しましょう。

例えば、ロゴにしたときのビジュアルイメージだったり、サービスやプロダクト内容にも関わる展開例だったり、こんなハッシュタグが使えますねとか、こんな広告もつくれて面白そうですねとか、こんなシリーズも考えられますね、などなど具体的な使用例を示すことで決定後のイメージを膨らませてもらいます。言葉や文字で伝えるだけでなく、時には簡易なデザインラフなどを作成したり、近い参考イメージなどを探して視覚で訴えることももちろん有効です。

ポジティブな可能性を数多く示すことで、決定に向けたネガティブな懸念事項を払拭していくサポートを全力でしてあげましょう。

具体的な手法例|
・ロゴにしたときのビジュアルイメージ、サービスやプロダクト内容にも関わる展開例、ハッシュタグ、広告クリエイティブ、シリーズ例、など具体的な使用例を示してあげましょう。
・言葉や文字で伝えるだけでなく、時には簡易なデザインラフなどを作成したり、近い参考イメージなどを探して視覚で訴えることも有効です。

[ Step.09 ] モノサシを明確にして比較検討を促す。

ここまでステップが進行してくれば、1〜3つ程度のアイデアに絞れてきているはずです。最後の決断に向けた比較検討をスムーズに行ってもらうために、それぞれのアイデアの検討基準=モノサシを明確にしてあげましょう。

例えば、A・B・Cという3つのアイデアで悩んでいるとします。この視点だったAがおすすめ、でも別の視点だったらBがおすすめです(でも決めるのはあなたです)。あるいは価値提供としう視点においてはA・B・Cともに必要十分ですが違うのは言い回しのテイストなので、あとはあなたの好みです(つまり決めるのはあなたです)。といったようにモノサシを示しながら、あくまで本人の頭での比較検討を促します。でも、あくまでモノサシを明確にして比較検討を促すのみ。決めるのは必ずご本人の役割です。

具体的な手法例|
・ある視点/基準だと◯◯案がおすすめ、とそれぞれのメリット/デメリットを示してあげてください。
・あるいは嗜好や覚悟など本人の決断しかない場合にはそのことも素直に伝えてあげてください。

[ Step.10 ] 覚悟をもって決定してもらう。

Step9まできちんと進むことができれば、遂にあとは覚悟をもって決定してもらうのみです。ここだけは絶対にその名(コトバ)を使って体を為していくご本人が行う必要があります。もちろん覚悟を持つために足りないことや懸念材料が出てくるようでしたら、何度でも前のStepに戻ってやり直す必要がありますが、このステップだけは絶対に肩代わりしてはいけません。仮に決められないとしたら、まだ何かの検討が足りないか本人の覚悟が足りないかのどちらかです。

最も突破するのが難しいステップと言えますが、ここをクリアするネーミングやコピーが生まれた暁には、ご本人はこれから何かを成し遂げるための大きな指針となる名やコトバを得るだけでなく、そこに至るまでのプロセスで検討・意思決定した内容はその後のプロダクト開発やマーケティング企画など様々なフェーズで役立てることもできるはずです。

具体的な手法例|
・ここまで来たら何もしないこと。最後に決めるのはご本人です。
・そのために足りないことがあれば、何度でも前のステップに戻ることも必要ですが、決定から逃げ続けることはないようにサポートしましょう。

以上が、現時点で僕が意識している「覚悟を持てるネーミングやコピーを共創する方法」です。それぞれにかける時間(日数)や関わってもらう人数はプロジェクトの規模や状況によっても様々にはなりますが、30分〜60分で1 on 1のネーミングセッションを行う場合でも、1年がかりで1,000人規模の会社のリブランディングを行う場合でも、少なくとも1〜10全てのステップを実行するようには意識しています。

しかし、冒頭で述べた通りまだまだα版レベルの内容ですし、それぞれのステップごとの具体的な方法論についてもまだまだ深掘りし洗練させていきたいと考えておりますので、ご意見やご感想などもどしどしいただきたいですし、何らかのカタチでこういったプロセス研究を共に行ってくださる方も日々大募集しています。

またなるべく近いうちにバージョンアップ版を公開できるようにがんばります!

* illustration by 前田 真由美


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株式会社サインコサイン 代表取締役 CEO 自由な働き方に挑戦するチームメンバーと、様々な共創手法を用いたブランドアイデンティティ構築やインナーブランディング領域を中心に支援。30分でネーミングやコピーを共創する念能力を修得済み。オフィスはWeWork Shimbashi。

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