クリエイティブを牽引するのは、Man or Machine?

※2016年12月にMediumへ投稿した内容の再掲です。

先日開催されたアドテック関西2016にて、「 Man or Machine ? クリエイティブ談義 」という公式セッションにパネリストの一人(モデレーター)として登壇させていただきました。ご一緒させていただいたのはライトパプリシティ・杉山恒太郎さん(68歳)、TBWA\HAKUHODO・栗林和明さん(28歳)という、ともに時代を代表する年の差40歳(!)の超有名クリエイターのお二人です。

そしてセッション内容なのですが、栗林さんもこんな連載を担当されているくらいにかなりの左脳派クリエイターですし、杉山さんもシンギュラリティや人工知能などにもとても関心高めのようでしたので、何かと話題のAI×広告クリエイティブをテーマに、「これからのクリエイティブを牽引するのはMANかMACHINEか?」という問いを軸に進めていくセッションにしました。

上記の議論を深めていくにあたり、僕のほうで3つのキーワードとそれらに伴うクエスチョンを用意して、お二人に回答していただくという形式で進めていきました。

人間解体

Kraftwerk / The Man Machine(1978)

1つめのキーワードは「人間解体」です。今回のセッションタイトルに通じるクラフトワークの名盤の秀逸な邦題から拝借いたしました。本作の発表時にラルフ・ヒュッターは自身をロボットであると宣言していますし、電子音楽の先駆者である彼らが当時から「Man or Machine ?」の警鐘を鳴らしていたことは明らかかと思います。ちなみに会場でも表題曲「The Man Machine」を少しだけ流しましたが、アドテックのセッション中にクラフトワークが流れることが後にも先にもなかなかないんじゃないでしょうか・・・笑。

また「人間解体」的なAI×クリエイティブ事例として以下の2つを挙げました。

The Next RembrandtはAIの機械学習によってレンブラントの作風を再現する有名なプロジェクトですが、まさに画家としての彼を「解体」することを通じたアプローチだと思いますし、The Robotic Chefについてもロボットアームが実際に料理をする前には有名シェフの動きを3Dモーションキャプチャで分析するという部分がやはり「人間解体」的だなと感じました。

また僕も本業であるパフォーマンス運用型広告クリエイティブ制作の標準化・自動化に向けた取り組みをいくつか行っているのですが、その際にも重要な変数になってくるのは人間の思考や感情を解体したものに他ならないと常々強く感じていました。

そこでお二人に投げかけた問いがこちらです。栗林さんは「バズのツボ」などの人間解体的かつ先進的な取り組みをすでに多く行われていることもあり全面的に「YES」という回答でした。今後は単純労働よりもむしろ知能労働がどんどんマシーンに置き換わる可能性が高いだろうという議論になりましたが、その一方で、クリエイティブにおいて本当に大切なのは「良質な答えを出す」ことではなく「良質な問いを設定すること」であり、それはマシーンには代替できないという杉山さんのお言葉がとても印象的でした。

道具 or 奴隷

2つめのキーワードは「道具 or 奴隷」です。2045年に訪れるとされるシンギュラリティ(人工知能がすべての人間の能力を超える)につきまとうのはどうしても悲観的なシナリオだったりします。古くはモダンタイムス、最近だとエクスマキナなどといった、進化しすぎた機械に人間が支配されることを描いた作品も多く存在しますが、最近の話題だとAlpha GOがイ・セドルに圧勝した出来事などもそういった悲観論を煽る一端になっているかと思います。

進化したAI / ロボットに対して、人間は手玉に取られることしかできない・・・

世界最高の棋士とされるイ・セドル氏に人工知能ソフトウェア「Alpha Go」が圧勝

しかし僕は火を「道具」として使いこなし「料理」という文明をつくりだした過去の歴史のように、シンギュラリティすらも「道具」として使いこなしながら、明るい未来を築いていく楽観的なシナリオをどうしても信じたいと思っています。


2つめのクエスチョンはそんな楽観的なシナリオを実現するためにどうすればよいのか?というものにしました。

思考もデジタル化する未来においてはマンとマシーンの関係は「主従」ではなく「合体」に向かうという栗林さんの主張もそうですが、モダンタイムスでチャップリンが表現していたのはマシーンの支配に「恐怖」ではなく「恍惚」を感じている人間の姿だという杉山さんのお話も含めてやはり未来においては「人間と機械は融合していく」ものなのかもしれないと感じました。

その融合のかたちとしてはそれこそフィジカルに取り入れていくこともあるのかもしれませんし、AI的なツールなどと人間がやるべきこと(人間にしかできないこと)の役割分担がしっかりとなされていくということもあると思います。どういう状況を奴隷と定義するかは非常に難しいというのもありますが、少なくとも主従を気にするよりは課題解決のためにどんな融合がベストなのか?を追求していくことのほうがはるかに重要ということだといったんは理解しておこうと思います。

セレンディピティ


さて最後のキーワードは僕の大好きな「セレンディピティ」です。AIはじめMachineを進化させているものって何だっけ?というのを考えたときによく挙げられるものが、「ビッグデータ」と「機械学習」そして「超高速コンピューティング」なのではないかと思います。

そういったワードを並べたときにあくまで主観ですが感じてしまうのがなんだかすごく「必然性とか正解とか」をよりカンペキに追求していくようなアプローチだなっていう印象なんですよね。
でも本当に人間を幸せにしてたり、大きな課題を解決していたりするのってやはり偶発的なものであることも多いんじゃないかと思ってぶつけてみた最後のクエスチョンがこちらです。

杉山さんの著書を読んでいたなかで感じた「彼はセレンディピティを重視してクリエイティブをつくっているに違いない」という僕の思い込みもあったのですが、いただいた回答は「広告を見る人がセレンディピティを感じるようなアウトプットを心がけている」というもので、これはかなり意外でしたがすごく参考になりました。

しかし、栗林さんが大喜利βの事例を通じて気づかせてくれた「AIが出しているのは意外性のある答え」という話はアルファ碁の戦法なんかとも共通していることであり、本来は人間こそが「セレンディピティ」や「意外性」や「裏切り」を感じさせるようなアウトプットをしなければいけないのに、それをマシーンにやられてしまっているのが現状なのかもしれないという危機感もあらためて感じました

大喜利βの回答例

AIが執筆した、馬鹿げていて、面白くて、わけがわからなくて、魅力的な映画脚本

シェフ・ワトソンが考案するレシピは人間には思いつかない斬新なものばかり

ちなみに上記の例のように、大喜利β以外にもクリエイティブ系のAIは結構意外性の強いアウトプットで話題をさらっていることが多いです。もちろんこういった意外性のあるアイデアを意思決定するのは人間にしかできないという役割分担的な割り切り方もあるかもしれませんが、やはりアイデアマンを自負するクリエイターとしては「どうすれば(どんな問いを設定すれば)もっとセレンディピティを感じさせるアウトプットができるのか?」「なぜそういったアウトプットを人間ができなくなっているのか?」「そのためにどのようなマシーンとの融合が考えられるのか?」などについては研究していく必要があると感じました。

まとめ

杉山さんがセッション途中で仰っていたんですが、ピッカピカの1年生キャンペーンはビデオという当時でいうことろの「最新テクノロジー」を目の当たりにして「これを使ってどうアンチテーゼを世の中にぶつけてやろうか」という少年のような企みゴコロから生まれたものだったとのことです。今こそ「最新テクノロジー(AIとかVRとか)」を目の前にしている僕たちのような若い世代が、これをどう使ってやろうかとワクワクしながら企んでいくこと(それはきっと人間にしかできないことなはず)こそが、マシーンと共存しながら面白いクリエイティブをつくる人間へと進化するために最も大切なことなのかもしれません。あらためてもっともっと「人間解体」しながら「セレンディピティ」を感じさせるアウトプットを生み出すための「道具」をつくる!という決意を新たにいたしました。

ちなみに・・・、杉山恒太郎さんといえば電通時代の代表作「ピッカピカの1年生」のお仕事は日本のTVCMの原点とも言われるくらいにあまりにも有名ですが、その後インタラクティブコミュニケーション局のときにスーパーバイザーとして携われていたスラムダンク1億冊キャンペーンや、2005年に出版された名著「ホリスティック・コミュニケーション」は冗談抜きでぼくがインターネット広告に憧れを抱くきっかけとなったものでした。そんな方と同じ目線で議論する機会をいただいたこと自体がすごくエキサイティングな出来事でしたし、とても楽しかったです!次回もセッション出してもらえるように日々精進いたします。

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加来 幸樹|SIGNCOSIGN

株式会社サインコサイン 代表取締役 CEO 自由な働き方に挑戦するチームメンバーと、様々な共創手法を用いたブランドアイデンティティ構築やインナーブランディング領域を中心に支援。30分でネーミングやコピーを共創する念能力を修得済み。オフィスはWeWork Shimbashi。
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